Photo by Laura BC / Burst
インスタグラム(Instagram)は今やマーケティングには欠かせないツールのひとつです。しかし、インスタグラムの使い方を誤ると投稿内容がステマとみなされて炎上し、ブランドのイメージを大きく損なうことになります。
では、インスタグラムをはじめとするSNSマーケティングにおいて、ステマを疑われないようにする方法はあるのでしょうか。
今回の記事は、海外や国内で問題となったステマの事例を紹介するとともに、SNSマーケティングがステマだと疑われないようにするためのポイントについても解説します。
目次
ステマとは
Photo by Matthew Henry / Burst
ステマ(ステルスマーケティング)とは、消費者に広告だと気づかれないように商品やサービスを宣伝し、販売促進を狙う行為です。ステマには大きく分けて2つのパターンが存在します。
一つ目は、芸能人やインフルエンサーが企業から報酬を得る代わりに、宣伝であることがわからないように良い口コミを書くパターンです。俗に言う「やらせ」がこれに該当します。
二つ目は、従業員や外部の業者が一般消費者になりすまして商品やサービスの魅力を宣伝するパターンです。端的に言えば、良い口コミを増やすために企業がサクラを用意するということです。
ステマはどのように始まったのか
インターネット上にステマが出現したのは、ブログブームが起きた2000年代です。従来のマス広告に限界を感じたメーカーは、人気ブロガーに自社製品を送り、その良さを伝えてもらうという宣伝方法を思いつきました。
その方法が効果的であると確信したメーカー各社は、新製品を出すたびにブロガーに無償で商品を送るようになりました。一方、ブロガーたちは競うように商品のレビューを始め、報酬を受けていることを隠して口コミを広げるという企業との奇妙な関係を常態化させたのです。
このようなステマの慣習は、YouTubeやTwitter、インスタグラムなどにおけるSNSマーケティングにも受け継がれ、今日に至っています。
ステマとアフィリエイトの違い
ステマと混同しやすい言葉にアフィリエイト(アフィリエイトマーケティング)があります。
アフィリエイトとは、インフルエンサーやブロガーなどに商品を宣伝してもらい、成果の引き換えとして報酬を支払うというマーケティング手法です。広告であることを明確にした上で消費者に商品を宣伝する正攻法がアフィリエイトの特徴です。
これに対して、消費者に広告であることを隠して宣伝を行う行為をステマと言います。情報の発信者が報酬を受けていることを伏せ、あくまでも自発的なレビューという体を装って商品を勧める狡猾さがステマの特徴です。
ステマの問題点とリスク
Photo by Scott Murdoch / Burst
アフィリエイトはオンライン販売における新たなビジネス戦略として期待され、近年はアフィリエイトで稼ぐ人も珍しくありません。一方で、ステマは口コミとしての効果は期待できても、モラルに反するマーケティング手法であるという認識が高まっています。
ステマの何が悪いのか
口コミには通常、商品やサービスを使ったユーザーの率直な意見が反映されます。消費者庁が毎年公開している「消費者白書」(2017年)によると、「レビューや口コミを参考にして商品やサービスを検討する」という消費行動が若年層を中心に見られます。
ところが、ステマが行われると、消費者は企業のPRを”第三者の自発的な口コミ”だと錯覚します。宣伝であれば耳を傾けないであろう情報でも,好きな芸能人やフォローしているインフルエンサーが積極的に勧める情報であれば好意的に受け取られます。
このような消費者の心理を利用して販売促進を狙うステマは、消費者を騙す行為にほかならないのです。
ステマが発覚するとどうなる?
ひとたびステマが発覚し、信頼していた口コミが「実はヤラセだった」「サクラだった」とわかれば、消費者は不信感や怒りを抱きます。その不信感や怒りは、宣伝をした芸能人やインフルエンサーはもちろん、広告主である企業にも向けられます。
消費者を騙すつもりがなく、知らず知らずのうちにステマを行っていた場合でも、消費者が「騙された」と感じれば、ネットやメディア上で大々的な批判を受けるリスクがあります。SNSが炎上すると、企業単体だけではなく業界全体の不買運動にもつながり、経済活動に大損害を与えかねません。
たった一度の過ちであっても、消費者から失った信頼を取り戻すことは至難の業です。一時的な販売促進が期待できるからといってステマに手を染めることは、賢い選択ではないでしょう。
国内で起きたステマの事例
Photo by Matthew Henry / Burst
「ペニーオークション(ペニオク)詐欺事件」や「食べログやらせ事件」などの騒動により、ステマは国内で広く知れわたるようになりました。昨今話題となったいくつかの騒動の経緯や結果を振り返ってみましょう。
ペニーオークション詐欺事件(2012年)
オークションサイト「ペニーオークション(ペニオク)」の起こした騒動は、ステマの典型です。ステマという言葉が流行語大賞にノミネートされるほど、この事件は社会問題になり注目を浴びました。
事件の発端は、複数の芸能人が「ペニオクでこんなに安く落札できた」とブログに投稿したことでした。相次ぐ芸能人の投稿を受け、「やらせではないか」という疑惑が浮上しました。
後にこれらの芸能人はペニオクから報酬を受け取り、実際には落札せず記事を書いていたことが発覚し、さらにはペニオクが詐欺のような仕組みで運営されていたことも明らかになりました。その結果、ペニオクの経営者は逮捕され、ステマに関わったとされる芸能人らは強いバッシングを受けました。
食べログ事件(2012年)
飲食店のランキングサイト「食べログ」においても、ステマが横行していることがニュースやワイドショーで取り上げられました。
本来、食べログはその店の利用者が書くリアルな口コミが売りとなっています。しかし、報酬を受け取って好意的な口コミを投稿するやらせ業者が飲食店に話を持ち掛けてステマを行っていたと判明したのです。
この事件では食べログの運営会社はステマに直接関与していないとされています。しかし、この事件の後、食べログをはじめとする口コミサイト全体の信頼度が大きく揺らぐ結末となりました。
映画『アナと雪の女王2』事件(2019年)
2019年12月3日、『アナと雪の女王2』の映画の感想を描いた漫画が7人の漫画家のTwitterに投稿されました。これらの投稿は同じハッシュタグを使って投稿されていたため疑惑の目が向けられました。
その後の調査の結果、漫画家たちの投稿はウォルト・ディズニージャパンが報酬を支払った上でのマーケティング施策であったことが明らかになりました。さらには、広告代理店として関与していた電通の担当者が漫画家たちに対して「広告表記は不要」と誤った説明をしていたことも判明しました。
このように、広告主やインフルエンサーだけでなく、その間に入る広告代理店や仲介者にも責任があることがステマの問題を複雑にしています。
海外で起きたステマの事例
Photo by Nicole De Khors / Burst
ステマが横行しているのは国内だけの話ではありません。海外においても、架空の人物が映画の口コミをしたり、ブロガーが不自然な投稿をしたりなど、さまざまな業界でステマが問題となっています。ここでは、過去の有名なステマの事例をいくつか紹介します。
ソニーデビッド・マニング事件(2000年)
なりすまし型のステマとして批判された事件のひとつに、ソニーデビッド・マニング事件があります。
映画評論家のデビッド・マニングは,2000年7月頃からソニー・ピクチャーズの映画『インビジブル』や『バーティカル・リミット』などを絶賛する評論を書きました。しかし、後に彼は同社が興行実績のためにでっち上げた架空の人物で、実在しないことが発覚しました。
事件の発覚後、ソニー・ピクチャーズの経営幹部は一時的な停職処分となりました。また、偽の宣伝によって映画を観てしまった観客らによる訴訟を受け、ソニー・ピクチャーズは合計150万ドルの賠償金を支払うことになりました。
ドクターペッパー事件(2003年)
やらせ型のステマとして非難を浴びた事件のひとつに、ドクターペッパー事件があります。
飲料会社のドクターペッパーは、10代の人気ブロガーに「ブログで新商品に関する記事を投稿してほしい」と依頼しました。依頼を受けたことについては触れないということを約束させる、ステマの典型的なパターンです。
しかし、ブロガーたちの宣伝が不自然だったため、ほどなくして投稿した記事がステマであることが発覚しました。その後、ドクターペッパーは新商品の公式ページの閉鎖を余儀なくされました。
ウォルマート事件(2006年)
世界最大の小売店であるウォルマートも、ステマで非難された過去があります。
ステマが発覚したのは、とあるカップルの旅行ブログです。後にこれがウォルマートが大手PR会社とともに立ち上げたやらせブログであったことが発覚し、カップルがPR会社から報酬を得ていたことも暴かれました。
当時、ウォルマートでは従業員の労働環境の悪さが問題視されていたために、イメージ向上を狙ってフェイクブログを立ち上げたと言われています。しかし、ステマが発覚したことによって、ウォルマートはさらなるイメージダウンに見舞われる結果となりました。
インスタでステマを疑われないためのポイント
Photo by Matthew Henry / Burst
過去のステマ騒動を振り返ると、悪意を持って消費者を欺こうとした事例もありますが、消費者を欺くつもりがなくてもいつのまにかステマに加担してしまっていたというケースがいくつもあります。
また、消費者がステマに過敏になっていることを考えると、些細なきっかけで「ステマかもしれない」と思われる可能性も十分に考えられます。
ここでは、インスタグラムでステマを疑われないようにするためのポイントを3つご紹介します。
1)ハッシュタグで広告であることを示す
ハッシュタグとは、特定のキーワードをタグとして機能させる仕組みです。インスタグラムの投稿にハッシュタグを使えば、広告であることを簡単にアピールできます。
<商品を受け取っている場合>
- #モニター
- #サービス提供
- #プレゼント企画
<金銭を受け取っている場合>
- #プロモーション
- #タイアップ
2)広告主を明確にする
インスタグラムの投稿が広告であることを明示しても、広告主が誰であるかを明示しなければ十分であるとは言えません。以下のような記載があることで、「インフルエンサーAは企業Bから報酬を受けて宣伝している」という関係性がより明確になり、ステマとみなされるリスクを軽減できます。
<良い例>
- 「この投稿は〇〇社とのタイアップです」
- 「〇〇社から新商品をいただきました」
- 「〇〇社の新サービスの体験イベントに招待していただきました」
以下のような記載では、広告主とインフルエンサーの関係性が不明瞭です。インフルエンサーの自発的なレビューとして捉えられてしまう可能性があるので、ステマでないことを強調する文言に書き換えましょう。
<悪い例>
- 「〇〇社の新商品を使ってみました」
- 「〇〇社の新サービスを体験してみました」
3)偽った情報を発信しない
消費者に注目してもらおうとするあまり改ざんされた情報を投稿をすると、それが発覚した際の火消し作業が大変です。なりすましや架空の人物のでっち上げは以ての外ですが、以下のような配慮も重要です。
- 消費者から集めたレビューを改ざんして投稿しない
- インフルエンサーに投稿内容を強要しない
ステマを疑われないように努力しよう
インスタグラムは、商品の魅力を視覚的に伝えることができる有効なマーケティングツールです。フォロワーが多ければ情報は瞬時に拡散される可能性が高く、販売促進を期待できるでしょう。
しかし、インスタグラムの使い方を一歩間違えれば投稿がステマとみなされ、大損失を被ることになりかねません。
ステマを疑われないようにするために重要なことは、広告主(企業)、情報の発信者(インフルエンサー)、仲介者(広告代理店)などの関係者全員が「ステマは消費者を欺く行為である」という認識を持つことです。
インスタグラムでSNSマーケティングを行っている方は、気がつかないうちにステマを行っていないか、ステマを疑われるような投稿をしていないか、この記事を振り返りながらぜひチェックしてみてください。
文:廣田 恵
ステマとは?
ステマとアフィリエイトの違いは?
これに対して、ステマは、消費者に広告であることを隠して宣伝を行う行為です。情報の発信者が報酬を受けていることを伏せ、あくまでも自発的なレビューという体を装って商品を勧める狡猾さがステマの特徴です。